マニュアルについて

私がマニュアルと言う言葉を耳にしたのは、今から37年前、コンピュータの仕事についてからだと思います。当時、日立、IBMの機種を扱う経験をしましたがコンピュータの性能、操作、プログラム作製など、ハードウエア、ソフトウエアを知るために様々なマニュアルが用意されていました。プログラムを組むのが仕事でしたので、それに必要な知識を得るためマニュアルを読みました。
専門用語がほとんどで、はじめは用語の意味を理解する事が大変でしたが、仕事に慣れてくるとマニュアルの内容が読み取れるようになりました。
私にとって、マニュアルは詳しく知識を得るための本、仕事の成果を上げるために読む本という印象が残っています。
いつの頃からは判りませんが、マニュアル化、マニュアル化といって会社がマニュアルを作り、仕事をさせるような事が当たり前のようになっています。マニュアルという言葉自体もすっかり日本語として定着しています。
例えば、外食産業のアルバイト店員、スーパー店員など接客する業界に特に普及しているように思います。また友達から聞いた話ですが,銀行もかなり前からマニュアル化と言って仕事を指導していたそうです。今もそうだと思いますが。
私自身、そのようなマニュアルを見たわけではないのですが、昨今それが仕事の基準となって、それに逸脱するような事態、仕事に直面すると対処できず、臨機応変、融通性が身についていない人が増えているような気がします。
以前にもブログに書きましたが典型的な事例として判りやすいので取り上げてみます。
塗料メーカー営業部の例です。
一昨年暮れ、塗装サンプルを試作するため塗料を注文しました。ルールとしてメーカーとのやり取りは塗料ディーラーを通してやることになっており、それに従って注文するわけです。
納品された塗料の色味が違っているので、ディーラーに作り直しを早急にとお願いしたのですが、メーカーが取り合ってくれないという返事。
仕方なく当社の担当者が電話をしました。理由は簡単です納期に間に合わせる必要があるからです。
すぐに工場に電話を入れましたが向こうの担当者が出ず、返事が貰えず、対応も悪いので当社の担当者は怒り出し、直接本社に電話を入れ直して社長を出せと怒号を上げていました。側で聞いていたのですが迫力がありました。
しかし、秘書の方が社長を出さないようにとのらりくらりと電話で受け答えしていたのでそういう料簡ならと怒り電話を切りました。
その直後か、次の日か忘れましたが営業部長なる人物から電話がはいり、非を詫びて、すぐに対応しますと決着が付きました。
後日、営業部 部長、主任、の両名がお詫びと称して当社に来ました。
今回の対応はどういうことだと当方は散々叱責しました。
私は、主任に直接電話に出なかった理由を問いただしました。
返事はこうです。「私のキャパ(キャパシティー)を超えていたので」
私はその言い訳に一瞬絶句しました。
私の頭では意味不明としか聞こえませんでした。
後日、どうしてそんな苦し紛れの言い訳をしたか考えてみました。
そのメーカーは全て塗料ディーラーを通してやりなさいとマニュアルに書いてあるか、命令として通達していたのではと思います。
ルーチン通りやらなければいけないと思い込んで判断が付かず電話に出なかったのではと。
そういう状況になって、上司に相談もしなかったのは理解できません。もしかしたら電話に出るのが嫌だっただけかも知れません。
しかし、営業部の主任クラスでこのような事が起きるということは、このメーカー、営業の仕事は何たるかを教えていないのではないか、前にも述べましたがディーラーを通して連絡された事柄以外は、問い合わせ、苦情等などは受けるなと指導していたのかもしれません。どんな事情があるにせよ、ことの本質は何処にあるか営業として自分自身で判断し対処できなければいけないと思います。手順、決まりなどマニュアル通りの仕事に慣れてしまい、考えて行動する意識が育っていないのでと考えます。
今時、学生アルバイトの働き場所がチェーン店の居酒屋、食べ物屋、コンビニ
など接客をする場合が多く、雇う方も短期間で教え込む必要もありマニュアルで指導するのかと思いますが、そんな経験がマニュアル通りすれば仕事の責任を果たすことだと思い込み、そのまま社会に出てしまいそんな背景があって仕事の取り組み方が同じ様になるかと思います。
仕事の本質と向き合い、何をすべきが自習するような教育をしないといけません。
昔から、武術、職人の世界では技は見て盗めとか、観察の中から技術を学習する方法を取っていました。その作業を繰り返すうちに自習する意義が判り自得してくるのだと思います。そのような面を持つ社員教育を考える必要があります。手取り足取りのマニュアル訓練は学ぶ側が主体性を見失うことになりかねません。
銀行勤めの経験のある友人から聞いた話です。
支店長の鞄持ちで、得意先回りをしたときの経験談です。
ある会社社長の事務所で懇談を終えて、帰る道彼は支店長に質問されたそうです。内容は「お前は社長をどういう人物と見たか」ということだそうです。具体的に答えられず怒られたそうです。支店長曰く「事務所にあるスケジュール表、書棚、など身の回りにあるものを観察して人となりを分析しておけ」。
彼は銀行マンとして人の見る目を確り身に付けることを教えてくれたのだと感じたそうです。
そういう意味で上司は部下の教育も自分の責任と認識しなければなりません。
今日、あるコピー機メーカーがコピー機の不具合を謝りに来ました。
作動しないことが度々有ったのでリース会社に返却を考えているからと伝えていました。
その件で責任者二名が来社し、寒冷のせいで信号が取れないことが原因で、部品交換で直りますと説明を受けたが、今までの経緯から信用できないと言いました。
名刺の肩書きにリーダーと有ったので、資質を見るために質問して探りを入れました。年は40半ば、彼が育った背景を知るために誕生日、学歴を聞きいろいろな質問し結果、彼の返事から、上司としてまだ認識が甘い点もあるなと。
その一点は、リーダーシップの発揮にイマイチと感じたからです。
しかし、真摯に聞く姿勢に好感が持てたので信用し修理を許可しました。帰り際、今後はしっかりしてくださいと言って別れました。
独断的な記述がありますが、いろいろな会合に出て、見聞した話が背景にあります。
マニュアルが全てでなく、仕事を遂行する上の補助であり仕事の本質を見失わないよう注意して日々の仕事から学ぶ気持ちを忘れないように取り組んでもらいたいものです。

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