テレビで、劇場版「臨場」というドラマを観ました。
ドラマ版で何度か見て「面白いなー」と、関心が高まっていたからです。
理由の一つに、死体から事件の解決糸口を探る作業に興味が持てたのです。
金属塗装業を営んでいますが、ダイカスト製品を多く扱う関係上、塗装不良の原因究明(思考過程)が必要になり何度もその作業をする必要があるのですが、それと同じだと感じていたからなのです。
現象を観察し原因を見付ける。実態顕微鏡、デジタルマイクロスコープなどを駆使して。
主人公の検視官、組織人としては型破り、しかし仕事をさせれば腕は確かという設定。
規律を重んじて仕事をする人達と対比させながら面白く仕上げてあります。
このドラマを見ていた時に、法医学の権威「上野正彦」氏を思い出したのです。
確か記憶では、仕事としてみれば「死体」を扱う仕事、好き好んでやるような仕事ではないが法医学を選択しその立場になってみると社会的使命を感じて取り組むようになったと語った事が記憶にあったのです。
改めて検視官という仕事を知りたくなり、上野正彦氏が書いた「死体は語る」という本を取り寄せました。
読んでみると、仕事とはいえ「お前やってみるかと」問われれば、躊躇するような仕事でした。
法医学を学ぶ動機をこう綴っていました。
「・・・いろいろ考えたが、自分に適した科が見当たらない・・・略・・・理由も目的もあまりはっきりしていないが、いきなり臨床医になって診察するよりも、それ以前の人間の問題として、生きるこということの意義、そして死とは何であるのか、そんな勉強をするのも、将来患者に接したときの自分にプラスになるであろうと考えたからである。・・・」、それで生涯の仕事となるのです。
この本には検死作業の事例が書かれており、読んでいると「死体は語る」と題名にしたことがよくわかってきます。
例えば「死者との対話」の章で、幼女が火傷で死亡した事件、死体からの観察で他殺と判明した事件、
「・・・家族の負担になっていた知恵おくれの次女。・・・略・・・しかし、悪事はうまくいかなかった。お湯の量が少なかったのである。熱湯は着込んだ幼女の着物に吸い取られて、流れ出なかった。丸い火傷はそのためであった。母と子という関係にせよ、加害者に対する被害者の必死の抵抗が、熱湯を決して流れ出させなかった。天の救いか、幼女の執念か。・・・略・・・今の若い母親の中には、生まれてくる子が五体満足でなかったら育てる自信がないから、生かさないでほしいと平気で医者に言ってくるものがいるというのである。・・・」、火傷の跡が決め手でした。ストーブにぶつかり熱湯を浴びたにしては、火傷跡が不自然だったからです。
もう一つ事例を紹介します。
廃品回収業の池さんの事件、死体発見からです。
「・・・化け物は万年床から少しはみ出して、仰向けに倒れていた。口や鼻の周りには無数のウジ虫がうごめいているが、額から眉にかけてわずかに池さんの面影を残している・・・略・・・肌寒い季節であったから、汚れたジャケットを重ねてきているが、下半身はなぜか裸である。股を少し広げ、陰部はほぼ逆三角形に抉り取られたように、陰茎も陰嚢も睾丸もなくなっている。猟奇事件である。・・・」、監察医である上野氏さすがにこのような現場は苦手と書いてありました。
死体解剖の結果、喉にマグロのブツ切りを詰まらせての窒息死、急所がえぐられていたのは、死亡後に猫に食いちぎられた結果、なぜかというと陰部に魚の汁をつけ猫を使って自慰をしたからと解明、「死体は語る」とは言い得ています。
現象を観察し、原因を究明する過程には観察力、洞察力を駆使して作業するのですね!
仕事をする上でも大切な思考作業、読んで勉強になりますが、殺人事件など起きるたびのこの様な仕事をしている方々がいるお蔭で事件が解決されるのです。
いろいろな職業が重なり合って社会があるとものと実感しました。
※
監察医(かんさつい、英: Medical Examiner)は、死体解剖保存法第8条の規定に基づき、その地域の知事が任命する行政解剖を行う医師の事である。
検視官刑事訴訟法229条によって、検察官が変死者又は変死の疑いのある死体(変死体)の検視を行うことにされている。しかし、同条2項によって、検察事務官または司法警察員にこれを代行させることができるとされており、一般的に司法警察員である警察官が検視を行っている。
そのため、検視を担当する警察官のことを「検視官」または「刑事調査官」と呼称している。「検視官」や「刑事調査官」はあくまで組織上の名称であり、こういった資格が存在するわけではない。ウキペディアより
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