この本の存在を知ったのが、28年ほど前、雑誌「プレジデント」の先帝昭和天皇陛下の記事からでした。
乃木大将が宮中に参内し、幼少の天皇に言上した際、「お読みください」とお渡しになった本の一冊です。
この後、乃木大将は明治天皇陛下崩御で自刃したのですが、幼少の裕仁殿下にお別れの思いを持って参内したようです。
その本を知りつつもそのまま時が流れ、その本が読みたくなり、ネットの古本屋から入手して、手元に置いていたのですが、いつか読もうと思いつつ、7、8年が経ってしまいました。それが最近ここに来て、合気道開祖植芝盛平が理念を語る時、「言霊学」「布斗麻邇」「皇祖皇宗の御遺訓」などの言葉を使われている事と関連がある様に思えてきたのです。
それは、どうやら記紀、古事記、日本書記が元になっているようです。
古来から伝わる伝承、伝聞が編纂された書物が参考となり著されてものと思えるからです。
最初に、山鹿素行遺著とあり、「中朝事実を読む」では、「山鹿素行(1622~1685)の著述の中で最も有名なもので、素行の思想学問の集大成とされる著述の名称である。・・・」
1ページ目には、皇統(上)とあり、天先章と記述があり、目次には漢文「論天地生成之義」とあり、神名を用いて天地の成り立ちを説いていました。
乃木大将が薦めた理由は、皇統を知る上で相応しい本と考えての事でしょう。
「言霊学」「布斗麻邇」に至っては、言霊学の唯一の教材と言われています。
「・・・「言霊」とは,古くは『古事記』『万葉集』の時代から存在する言霊信仰に遡る「言事即融の観念」である。簡単に言うと、「言」は「事」に通じる(同義)とされ、言葉に出して言えばそのように物事が実現すると考えられていたということである。言葉に宿る神霊、神秘的な生命力が前提とされた観念であった。・・・」古神道の秘術より。
開祖植芝盛平は大正時代に大本教に入信し、出口王仁三郎のもとで学んだようです。
記紀には皇統が書かれており、開祖が「皇祖皇宗の御遺訓」と話されるのもその影響では考えます。
その言葉に関連していると思われる記述。
天先章の中に、訳本から引用すると、「・・・神世七大の最後に、この二神が中朝の国造りをして、男女間の礼を正されたのである。男女は陰陽に本であり、人と人の正しい間柄の礼の五つの基本(五倫)の始めとなるものである。男女があって夫婦があり、夫婦があって、父子があり、父子があって、引いては君臣の道が成立するのである。・・・」
この様に人倫を説いているところから「教育勅語」にも引用されたのでしょうか?
次のような記述があります。
「・・・爾臣民、父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和し、朋友相信じ、恭倹己を持し、博愛衆に及ぼして、学を修め、業を習い、以て知能を啓発し、徳器を成就し、進んで公益を広め、世務を開き、常に国憲を重んじ、国法に遵い、一旦緩急あれば・・・略・・・斯の道は、実に我が皇祖皇宗の遺訓にして、子孫臣民の倶に遵守すべき所、・・・」
開祖も合気道を「和合」と説いています。
私がこのような本を読む関心があったのも、多分に開祖の話をじかに聞き、後の講演テープなどを聞いていた事が大きく影響しているのだと思います。
温故知新ではないですが、一日本人として古代から受け継がれている精神文化の一端を知る機会を得ました。
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