喜界島 小野津語 阿伝語の発音の違い。

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両親が喜界島小野津の生まれ、幼いころから方言(当地の呼称:しまゆみた)を日常的に小野津語を聞いていました。
特に、親戚縁者が集まると標準語(共通語)では喋らず、方言で会話をするのでほとんど意味は分かりませんでした。
しかし、耳慣れてくるとどんな会話かは多少わかるようになっていました。
おふくろ生きている頃は、年に1、2度親戚縁者の集まりがあり、皆が方言を使うので、郷土の雰囲気が流れます。
ただ方言が分からない人にとってはチンプンカンプンです。

これほど、本土で育った人から聞くと、ほぼ外国語、何故そんな違いが出たのかと言えば、まずは母音が本土で「あ・い・う・え・お」と5音ですが、喜界島(奄美諸島を含む)では母音は「あ・い・う」と3音が発音の基本となります。

この本で言語学的に喜界島の言葉が紹介されています。
存在を知ったのは義叔母が、生前「恒ちゃん、戦前本土から喜界島語を調査に来た人がいたのよ!」(発行された時期は、昭和16年1月と記されています。)と言われ、ずっと後になってから、多分ネットで調べ復刻版があることを知り購入したものです。
特徴的に言えば、前述して母音の数、5音と3音の違いでしょう。

発音の違いがどう出るかというと、国語の[e]は[i]に、〔o〕は〔u〕に発音される。
例えば、冒頭で「しまゆみた」と方言の呼称を記述しましたが、ローマ字表記では[shimayumita]となりますが、本土の発音では[yu]のところを[yo]と発音して「しまよみた」という具合になります。
両親の出身部落小野津は[onotsu]と今では発音されますが、私の両親の世代の人は[unutsu ]と発音する人もいます。
発音の仕方は、戦後方言使用禁止を学校で強いて、今ではその辺の区別は曖昧になり混在しています。
私は今、奄美民謡を習っていますが、同じ傾向がみられます。
有名な民謡で「ヨイスラ節」がありますが、[yoisurabushi]と発音する人[yuisurabushi]と発音する人まちまちです。
他に国語と違い「カ」行「タ」行に認められます。
その子音[k][t]が無気音になるのです。
例えば、「アカ」(赤)「ウㇳウ」(音)は実際は「アカ△」※△は語尾は息を使わず発音すること示し「ウㇳ△ウ」も同様に発音されます。
国語の「赤」[aka]「肩」[kata]とでその違いが分かるかと思います。

この本、発音の仕方を文字で示すために、記述で工夫を凝らしています。
「フ△」は[hu]をあらわし、「フ」即ち[fu]と区別するとあります。
通常国語で「は・ひ・ふ・へ・ほ」と発音し語尾は一拍ほど息を使いますが、△で無気音の発音でと説明しています。

発音の仕方に就てまだほかに記述がありますが、表題で示した小野津語、阿伝語の発音の違いを説明します。
動詞・形容詞の活用例で示しています。
く=キュイ「書く」「行く」は「カキュイ」「イキュイ」で、国語の「く」の語尾は喜界島では悉く「キュイ」となっている。但し「キュイ」は小野津語で、他では「チュイ」に転ずる。
阿伝の方に聞いてみるとこの通りの発音が確認されました。
「キュイ」終止形動詞の活用は下記の通りである。
「カ」「キ」「キュイ」「キュン」「キ」「キ」[小野津]
「カ」「チ」「チェイ」「チュン」「キ」「キ」 [一般・阿伝含む]
即ち「書かない」は「カカン」、「書き度い」は「カキブシャイ」、「書く人」は「カキュンチュ」、「書けば」は「カキバ」、「書け」は「カキ」となる。
阿伝語では、
即ち「書かない」は「カカン」、「書き度い」は「カチブシャイ」、「書く人」は「カチュンチュ」、「書けば」は「カキバ」、「書け」は「カキ」となる。
他に、濁音、半濁音の説明もありますが省略します。

次は、単語の違いを列記します。
●赤い。朱、紅にもいう。
小野津:アーミュイ
阿伝 :アーニュイ
●鰓(あぎの義)字としては魚の「えら」を意味していますが、説明から顎と思われます。
小野津:アギ
阿伝 :アイ イは鼻音
注)60代は半ばの人に発声をお願いすると鼻音ではなく国語の発音と同じでしたが、当時はそのように発音していたと思われます。
●息
小野津:イキ
阿伝 :イチ
●出会う。口約する。婚約する。
小野津:イキャユイ
阿伝 :イチャウイ
●埋む(うめる)
小野津:ウンミュイ
阿伝 :ウンニュイ
●食う、噛む
小野津:カミュイ
阿伝 :カニュイ

因みに奄美本島と喜界島で違ってくる発音がカ行で喜界ではハ行に変わります。
例えば「米:クムィ」は喜界島では「フミィ」、「お金:カネィ」は「ハネィ」となります。

方言集にはたくさんの言葉は採録してあり全部は紹介出来ませんが一例をあげてみました。
発音の特徴として「拗音」が挙げられます。
喜界島方言集は三百数十頁もあり、今後方言の意義が見直される時が来たら貴重な資料となるでしょう。
現在では各地方の方言を使う人たちは減少していますが、これは戦前の国策として言葉を統一しようとした結果でしょう。通信媒体の発展がさらに推進することを助けたと思います。

編者柳田国男氏は本の中で次のように書き記しています。
「・・・全国一致の言葉に引き継がれて行くことを、拒み妨げんとする者などあろう筈が無い。だから統一の必要を感ずる土地では、特にこの新旧の繋がりを尋ね究めなければならぬもので、それを全然怠って居た者が、強いては昔の言葉を使わせまいとしたことは、島々の大きな不幸であったと私などは信じて居る。この方言集が世に弘まった暁、先ず現れてくるものは反省であろう。其次に過ぎ行く老人たちの心持を理解しつつ、之を若い世代に紹介する志となって、国の協同を愈々奥深いものとすることが出来るだろう。・・・」
斜線部の記述を読んで、方言を使わない様にとの機運は戦前からあったようです。
戦後になって、奄美諸島ではあえて教育で方言を使わせないようにした結果、
喜界島では方言をほとんど使われなくなり、今の世代の人達は喋ることはできません。
※編者が当時危惧していたことが現実となっているようです。
今は、その反省から学校で教えるようになっているようですが、コトバは使わないと消えていくものです。
だた、今では奄美民謡を通して知る状況となっています。

補足に、YouTubeにアップされていた鹿児島弁で「外出自粛」を呼びかける「猫」、それを翻訳した言葉を、
喜界島阿伝語、奄美本島宇検村田検語を紹介します。
地域で言葉が変わる例として参考になると思います。

鹿児島弁「猫」コロナ自粛を喜界島バージョンで!
喜界島阿伝の方に翻訳してもらいました。
・おや!あんたどこへ行くのね。
阿伝)はぎー、だぁーじゃがいいくすよ
・我が家にいなさい。我が家にいなさい。
阿伝)わんなーやにいぐり。わんなーやにいぐり。
・外をウロチョロしなさんな
阿伝)すとぅばウロチョロしんなようー
・は?散歩?まあ~いつも運動のうの字もしないで
阿伝)ぬーよ?さんぽ?いとゅむ運動のうの字のしらんね~
・テレビの前でゴロゴロして屁ばかりしている人間が
阿伝)テレビんめーじゴロゴロしひぃばっかりすん人間ぬ
・どうせニュースをみて
阿伝)どうせニュースばみちぃ
・行ってもいいけど…
阿伝)いちむゆたさんけど…
・帰ってきたら、まずは手をしっかり洗うよの隅々まであらってよ
阿伝)むどゅてくりば、まどゎてぃしっかり洗うすどう~
・うがいもですよ
阿伝)うがいもすすどう~
・風呂に入る時はたっぷりの湯で隅々まで洗う事
阿伝)風呂にいうんどけ~一杯ぬ湯うじ隅々までぃ洗うすどう~
・なに?私ね?私は猫だから
阿伝)ぬうよ?わのうや~わのうまやあなってぃ
・風呂ははいらないの…湯は嫌いだ
阿伝)風呂~いらんどちぃ…ゆうやすかぁ~
・私な毎日体の隅々まで
阿伝)わの~毎日体の隅々までぃ
・ペロンペロンして舐めて
阿伝)ペロンペロンし、なみてぃ
・いつもピカピカできれいだよ
阿伝)いとむピカピカすらさんど~
・私のことはいいから
阿伝)わんぬくとお~ゆたさんまてぃ
・あんた達コロナに負けんな!頑張れ~ファイト!
阿伝)だんな~コロナに負けさんな!ちばりよ~ファイト!

コロナ禍外出自粛の呼びかけを、奄美宇検村田検語で
・おや!あんたどこへ行くのね。
田検)ハゲー!のォーだーちいきー(又はいきな~)
・我が家にいなさい。我が家にいなさい。
田検)わーきゃーやーなんふれィー わ~きゃーやーなんふれィ
・外をウロチョロしなさんな
田検)すぅとうばウロチョロ すんなョォー
・は?散歩?まあ~いつも運動のうの字もしないで
田検)へェー?あっきな?ふだんなうんどぅぬ うぬ字むすらんねーし
・テレビの前でゴロゴロして屁ばかりしている人間が
田検)テレビぬ めーなんてぃ ゴロゴロしゅてぃフェ―べりしゅんちゅぬ
・どうせニュースをみて
田検)どうせ ニュースばみちぃ
・行ってもいいけど…
田検)いじん いちゃんばん…
・帰ってきたら、まずは手をしっかり洗うよの隅々まであらってよ
田検)むどてぃからや すぐ手(てぃ)ば きゅらさ洗うョォー(又は:洗ゆんねんし) 隅々がでぃ洗うんよォ~
・うがいもですよ
田検)うがい きゃんどォ~
・風呂に入る時はたっぷりの湯で隅々まで洗う事
田検)フロち入りゆんときや いっぱいぬ湯しすみずみがでィ洗ゆんねんし
・なに?私ね?私は猫だから
田検)ぬう?わんな?ミャーなてぃ
・風呂ははいらないの…湯は嫌いだ
田検)ふろーや いりゃんどォ 湯やすかん
・私な毎日体の隅々まで
田検)わんや 毎日体ぬすみずみがでィ
・ペロンペロンして舐めて
田検)ペロンペロンしゅてィ なむィてィ
・いつもピカピアできれいだよ
田検)いっちゃん ぴかぴか きゃらさっとォー
・私のことはいいから
田検)わーくとぅや いっちゃんからん
・あんた達コロナに負けんな!頑張れ~ファイト!
田検)いきゃや コロナなん 負けんな!きばりィョオ~ファイト!
宇検村田検語でした。
残念ながら、編者が危惧したように使わせまいとした結果消え行く運命なのでしょうか?。

 

 

 

 

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