勝負あり–猪熊功–

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なんと綺麗な投げ技、昭和34年5月5日、第12回全日本柔道選手権大会決勝で猪熊が神永を一本背負いで決めた写真、

本の表紙に使われるのも理解できる。

この時の様子本の記述では、

「・・・猪熊は蛙のように両足の踏ん張って腰を落とし、そこから強靭な腰のバネをきかせて神永の巨体を撥ね上げた。猪熊の左膝がピンと伸びた時、神永の巨体はすでに猪熊の背中の上で死に体となって一回転している・・・」。

今、これほどの技を使える柔道家がいるだろうか、背負投、一本背負いなど両膝をついて投げるのがほとんどです。

最近ブログで、柔道界のことについて書く事で、戦前、戦後の柔道家に関心が高まりこの本を買いました。

ニュースで、猪熊が経営に行き詰まり自殺したことを知っていましたが詳しく知りたくなったのです。

東京オリンピックでは、あのヘーシンクと一戦交えたかったと言われていました。

その戦い見たかったですね。

 

身長173センチと小兵ながら大きい相手を投げ飛ばす力量は評価が高かったのです。

東京オリンピック重量級で、カナダの巨人・ロジャース190センチ・120キロを下しています。

彼の恩師渡辺氏の指導によるものでした。

「・・・後に猪熊は書いている。「相手が大きい場合、自分が大きくなれるはずがないから、反対に相手を自分と同じ大きさにしてしまえということである。渡辺先生から言われた目線のことである。」横須賀時代からの恩師渡辺は、猪熊に繰り返しこう言い続けた。「相手の目の位置を自分の目の位置と同じ高さまで近づけよ。相手の首を手前に引き下げてしまえ。相手の身体をエビのように曲げてしまえ」・・・」。

合気道の口伝にも、「大きいものは畳んで、小さい者は伸ばして投げろ」、この記述を読んで思い出しました。

術理は一緒ですね。

建設業界に身を置いて柔道界からは去ってしまったのが今更ながらもったいなかったなと思います。

小柄な日本人が大きい相手と伍して戦える技術を持っているのですから指導者になっていればと。

ロンドンオリンピックでは100キロ超級ではメダルも取れず、著しい実力低下があり、石井慧がプロに転向して、そのような逸材が見当たりません。

小兵ながら巨人を相手に戦える技術を教えて欲しかったものです。

猪熊の技の切れをご覧あれ

その彼が経営に行き詰まり自決をしたのが2001年9月28日、その場で立ち会ったのがこの本の著者井上斌氏、自身も合気道家、猪熊に乞われて東海建設に入社した縁から自決に立ち会うことになったのです。

彼は倒産に至る原因の一つに、東海大学の対応を上げていました。

「・・・しかしながら平成12年頃から、銀行を始めとする金融機関は「貸し渋り・貸し剥がし」をなりふり構わずやり始めた。私が理解に苦しむのは、なぜ東海建設がその対象になったかということである。大学、銀行との付き合いは経理部がかなりやっていて、十分優良な関係を築いていたと思うのだが・・・・少なくとも大学が本気でバックアップしていれば、・・・」と。

当時、マスコミでは「貸し渋り貸し剥がし」と話題に上っていました。

私も景気後退はひしひしと感じた時期でした。

 

また、猪熊の心境を次のように書き綴っています。

「・・・「良くも悪くも俺は他人に見られ続けてきた人間だ、会社を潰してのうのうと生きて行くことはできない」という言葉に・・・」。

今生きていれば75歳、柔道界に大きな貢献ができたはず、

昨今、全柔連助成金不正受給、内柴事件、女子柔道の告発から監督辞任など大揺れですが、優秀な人材を失ったものです。

他に、鬼の柔道・木村政彦は講道館から追放されています。

大日本武徳会との確執など知るに付け閉鎖性の高い組織と思えてきました。

だからここへ来て、様々な問題が持ち上がってきたようにも見えます。

 

例えば、時は昭和36年、当時の講道館長・嘉納履正は、

「・・・さらに道上が最高技術顧問を務めるオランダ柔道協会に対しても、「道上は講道館と一切関係ない」と告げ、絶縁を促したとも言われている・・・」。

道上氏は武道専門学校の出、柔道を教える教師育成機関、いわば今風に言えばプロ、柔道で飯が食える立場。

それを全国から優秀な人材を選抜し鍛えるわけですから強くなるわけですね。

国策で作られた大日本武徳会、かたや講道館は一民間道場、人材的にも優れていたことは想像つきます。

それが占領政策で潰され、残った講道館が戦後の柔道界を牛耳る結果に。

その結果、柔道、武術からスポーツへと変化したわけです。

猪熊はその点をどう感じていたでしょうか?

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合掌

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