亡き母の師より貰いし「詩集」ー後藤静香ー

9/8公開のブログで「詩集」の話題について書きました。
詩集について書いたことが身近においていた、亡き母の師より貰った詩集に気づいたので紹介したいと思います。
20数年前、師がおやじの家に訪れた時、差し出されたのが詩集「權威(けんい)」でした。
「恒暉さん読んでみませんか」と問われ、手にしたのです。
見た目、本は赤っ茶けてとても古い感じがし、出版された年月を確認すると昭和21年初夏とありました。
私が生まれた年です。
そのことが詩集に関心を持たせる動機にもなりました。
戦後、1年が経って書かれた詩集、敗戦に打ちひしがれている人々を励まそうと書かれたようです。

「序に代へて」の記述を全部紹介した方がよいと思いますので。
原文のままで。
「渇いたこゝろに、饑ゑたたましひに、一掬の水となり一片のパンとなるならば、之にまさる悦びはありません。二百數十の短篇、詩もあり、詩らしいものでもあり、單なる感想の集約もありますが、何れも著者の體験・信念・實感の現れで、特に明るい明日への希望をしめしうなだれた心に勵ましを與へ、若き人たちに輝きに満ちた光明の道をたどらせようとの願ひから綴ったものが多數であります。多方面にご利用頂けましたら仕合せに存じます
     昭和21年初夏                 著者         」

序の中に「若き人たちに輝きに満ちた光明の道を」とあります。
当時、広島、長崎、に原爆が落ち、東京は焼け野原、各都市が、戦災で破壊しつくされた日本です。
明日への希望も見えない、そのような状況下励ます目的で、この詩集を出版したのでしょう。
手渡され、最初に読んだ詩が次の物でした。

「日本の姿」と題し、

劍(つるぎ)を棄てた
それでいゝ
劍を棄ててこそ
眞の日本の姿がひかる
神話は神話だ
それでいゝ
神話にやどる魂に
眞の日本の姿がひかる
三千年の歴史が汚れた
悲しむな
これから作る長い歴史に
眞の日本の姿がひかる

 

この詩を読んで、次の句にとても思いが行きました。
「神話にやどる魂に、眞の日本の姿がひかる」
この言葉、開祖植芝盛平が残された口述と重なってきたのです。
例えば、「合気神髄」植芝盛平語録
「合気は息の妙なり」の章、
「誠一つに質素を旨とせよ」の項でこう述べています。
「・・・これ天照大御神、月読大御神、須佐之大御神。この三貴神が生まれて、ますますこの世の中の組織が完全に営まれてくるわけである。それでこの完全に営まれつつあるところの精神をわれわれの教訓にかかげること。・・・・」
と記述して、神々の生成、生育などの働きを以て、合気道の精神、修行の仕方、人としての在り様などを説いています。
このような神話から説明する基に記紀があり、開祖はそれらから学んでいたことを認識していたことが、先ほどの言葉に結びつけたのです。
「神話にやどる魂に、眞の日本の姿がひかる」
開祖と重ね、実感したのです。
開祖を知ったことが神話の意義を教えてくれたのです。
縄文、弥生頃から発生した神道の流れであり、日本民族の精神性の原点として思えるのです。

私にとって、ほかに心に沁みた詩をいくつか紹介します。

「第一歩」

十里の旅の第一歩
百里の旅の第一歩
同じ一歩でも覺悟がちがふ
三笠山に登る第一歩
富士山に登る第一歩
同じ一歩でも覺悟がちがふ
どこまで行くつもりか
どこまで登るつもりか
目標がその日、ゝを支配する

この詩などは、目標、志を持つことの意義を簡潔に分らせる内容になっています。
少年よ大志を抱け、末は博士か大臣か、などある意味、野望を持つことの大切さを説いています。
音韻も読むとなめらかなリズムとなって心地良いものがあります。
次は、

「賢母」

全ての母よ
御身の子供が
御身の専有物ではないぞ
全人類のものぞ
彼の使命を尊重し
完全に 自由に
行くべき道をいかしめよ
爾(なんじ)の名を賢母という

 

母として託された責務と重さと、子を社会へ送り出すという母の尊い働きを教えているのではと感じました。

この詩集、気に入ったので貸して下さいと申し出たら、差し上げますと言われそれ以来身近なところに置き、大切に持っています。たくさんの良い詩があり心を鼓舞するものもあり感謝しています。
これを書いた方、大正年間、昭和と社会強化運動されて、師が師事された先生です。

贈呈されたのでしょうか、詩集の一頁目に署名があります。
井元 不二子 様
          静香

それから幾年経ったかわかりませんが、新しく出した詩集があると言って、送ってくれた詩集が「道のしるべ」です。
これも同様、人生の指針を示した記述になっています。
一つ紹介します。
「好ましからぬ性格」
「自分の役目も、満足に果たせないくせに、ひとのすることには、何かとおせっかいをしたがる人がある。何をするにも、人の思わくばかり気にして、よくみられようということだけに、しんけんな人がある。仕事らしい仕事もできないのに、何の修行もせぬ人がある。
こういう性格の人は、何をやってもものにならず、どこへいっても嫌われる。」
肝に銘じておき、心掛けねばなりません。
最後に心洗われる詩を紹介します。

「全力」

大關(おおぜき)の相撲
名優の芝居
幼稚園の運動會
見てゐると涙がでる
全力が
餘りにも神々しいからである
はちきれる程に熟した西瓜の美しさ
咲けるだけ咲いた野菊の美しさ
全力は美である 

力一ぱいの現れは
何でも人をひきつける

64年前の詩です。

「幼稚園の運動會」は今も親たちが熱狂するのは純真な全力です。

どの時代も人として生きる道は変わらないことがわかります。

 

参考資料

 「權威」 著者 後藤静香 出版 學修會出版部 

 「道のしるべ」 著者 後藤静香 出版 社会教育団体 心の家

 「合気神髄」植芝盛平語録 監修 植芝吉祥丸 出版 柏樹社

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