刀と錆について

前回のブログで居合いに使う私の刀を紹介しました。
刀も手入れをせず放置していれば錆が出来ます。
稽古が終わって必ず、和紙で汚れを取り、打ち粉を打ち掛け拭い、丁字油を塗って鞘に収めます。
刀は武士の魂といわれた時代には錆を出したときには、品行を問われました。
武家では、非常時に備え槍、刀などの武器の手入れに大層神経を使っていたようです。
私は金属を塗装し錆から守る仕事を生業にしております。
仕事柄、書棚に30年ほど前、購入した本で『随想 さびの話』をたまに読み返しをします。
さびについての随想をまとめて本にしてあり、著者の博識な視線から書かれておりなかなか面白いです。
その中に、当時、武器をさびから守る仕事についての話が載っていたので引用させてもらい、紹介いたします。
『松平直富という元伯爵家に、先祖伝来の御手杵(きね)の槍(やり)という名の付けられた有名な槍がある。この槍は西に黒田家の日本号あり、東に松平家の御手杵有りいわれ、本朝名槍の両横綱である。
御手杵の槍は、松平家の遠祖、結城素朝公が戦場で愛用されたもので、槍を鍛えては、まれに見る名手で駿河国の島田義助の一代の傑作で、穂の長さは4尺6寸、全長1丈1尺である。この槍には長さ5尺有余、直径1尺5寸ぐらい、目方6貫の熊皮製の手杵の形の鞘(さや)がかぶせられている。槍の名はここから出ている。
 ※ 注 私が子供の頃まだ尺貫法を使っていましたが、今の人たちはわからないと思い付記しました       1丈→約3メートル 1尺→約30センチ 1貫→3.75キログラム
松平家では代々、この槍を自慢の家宝として参勤交代には供先に立てて道中したと言う。それで、松平家では、この槍の手入れに心を込め、少しでもさびがつけばすぐ研いで手入れをした。この槍の手入れをする御抱研師(おかかえとぎし)は、さびを見つけて手入れをするたびにごとに10人扶持の御加増を賜ったので、今月さびて、また来月にもさびれば、20人扶持となるのであって、心をかけてさびを見つければ、研師の扶持(給料)がよくなるわけであった。
よく心がけて、さびを見つけて、さびによるいたみを起こさせないようにと、手入れをするための奨励策であったのだとも考えられるけれども、さびが生じるたびごとに扶持が増すのでは、わざとさびを見つければ、もうかるというわけだ。
けれども昔の人は、さびがついたと時には自分の不注意のためであるとおもい、扶持を増すことをかえって自らの恥として、少しぐらいのさびであると「イヤ、これはさびでござらぬ」と言いつつ、10人扶持を断りながら手入れをしたということだ。責任をもつことについてのよい教訓かもしれない。この話は刀剣の鑑定で有名な本阿弥光遜氏が『人の噂』という雑誌に載せられた随筆で読んだことである。・・・』
この話は槍についての管理の話でしたが刀も同様に扱っていたことでしょう。
この文章が書かれた時期が昭和35年12月とあります。今から47年前にもなりますが、「責任」について改めて考えさせられました。
前々回のブログ「もの造り」で、取り上げた職業的倫理観にも繋がる話しと感じました。
「お金を儲ける事を考える前に、仕事の責任を果たす事が先にあると」
先人達が残してくれた本には、教訓としてよいものがたくさん詰まっている気がします。
それを継承し後世に伝えるのも今に生きている私達の務めではないか。
時代が変わっても変えてはならない事があるということだと思います。
閑話休題
このブログを書いていた日に、奈良市町長会の視察旅行の無駄使いをテレビ取材で取り上げていたが
各町長の弁解には驚かされた。ある町長は公費で払いを済ましておきながら、後から追求されたので半額は自費で払ったと言う。その事を盾に、泊まった高級旅館に食事と称しコンパニオンを呼んでいたことを聞かれ、金を出したのだからいいではないかと開き直り、まったく反省が見られない。
この町長会の自治体はすべて赤字なのに!!。
町長という役目が何なのか自覚が見られないし、責任感も感じられなかった。
奈良市だけでなく私が住んでいる自治体また近辺の自治体も、リーダーはこの程度かもしれないとニュースを見て感じた次第です。
どんな人たちが町長、市議会議員なっているかを考えれば当然の帰着かもしれません。
世代的に私とほぼ一緒の人たちだった。
私は小さな会社を経営しています。自分の役目には自覚を持って臨み、競争社会に身を置いていますが、果たしてその違いだけでしょうか、背負っているものをどう見るか感じるか、その人たちの人生観が大きく影響していると思います。
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