機事機心

海上自衛隊、イージス艦「あたご」と漁船の衝突事故でこの言葉が頭に浮かんできました。
何故かと言えば、最新鋭の技術を装備した艦船が事故を起こしたからです。
機事機心という言う意味は簡潔にいえば、機械、道具に頼りすぎ心に隙が出ると解釈できるでしょうか?
この言葉を知ったのが、『勘の研究 黒田亮著』と言う本からです。戦前の昭和前期、日本で有名な心理学者が戦前出版した本の復刻版です。
合気道を稽古している関係で勘のことに関心があり買い求めました。
その著者はこの本で勘が形成される過程、構造を禅、芸事、剣術の極意、などの事例を取り上げて書かれていました。
合気道創始者 開祖 植芝盛平翁はとても勘が鋭く、霊感があるような人でした。翁は大本教の信者でもあり、鎮魂帰神の行をしたり、日課のように毎日神棚の前で祝詞を唱えていました。そのような修行が霊感、勘、六感と言われるような心の働きを作ったと言われています。
私は、翁が持っているその能力を知る一助になればと読んでいたのですが、章「荘子の解釈」の一節に『機事、機心』が記述されていたのです。この言葉の意味を理解していただくため文を引用します。
後人(こうじん)は後世の人の意
 竄入(ざんにゅう)は誤って入りまじる。まぎれこむことの意
「壮子天地篇に機械ならびに能率を論及した一節がある。これは後人の竄入であるとの説もあるが、考うべき点が多いから本文を引用する」と綴り、漢文、訳文が続き、締めくくりにこう書いてありました。
「・・・・・けれども一方にまた人間は便利な機械がある場合とかくこれに依頼しすぎる欠点を持っている。機械が手近かにあるとすれば一にも二にもこれを使用したがる。これがすなわち機事である。機事は機心を造り上げる。機心は外物に気を取られてその内を治めることを忘れる。
換言すれば一事に専念することができない。これ純白備わらずの謂(いい)である。雑念蜂起すれば精神安定を欠く・・・・・・」
この文面から冒頭に記述した「機械、道具に頼りすぎ心に隙が出る」と私は理解したのです。
今回のイージス艦の事故はまさにこれと直感したのです。自動航行(機事)をして心に隙(機心)が起こり漁船と衝突したのでは。報道ではいろいろと回避義務とか視認したのは何分前とか話題が出ますが、海上自衛隊の役割を考えればイージス艦の方に責任があるような気がします。
毎日新聞 3/21付けの見出しにこうありました。
「見張り、回避不十分、防衛省報告 3不祥事 88人処分」
毎日新聞 3/22付け見出し
「回避命令衝突数秒前」
「イージス艦中間報告、緊張感まるでなし、艦橋内で窓越し見張り、当直体制許可なく変更、赤灯・・・士官承知のはず」
前のブログにも書きました。「・・・・だが、危機不感症的な泰平ムードの今日こそ」40年以上前に危惧されていた言葉ですが、この事故にあてはまるような言葉です。今はあまり耳にしませんが、「精神がたるんでいる」なのでしょうか。
漁船が多く航行する場所なのに、艦長が仮眠を取っていたことが報道でありましたが、これも先程の言葉「・・・・だが、危機不感症的な泰平ムードの今日こそ」にあてはまる出来事と思いました。生死と向き合って戦いの場に出る人たちがこの様では情けないです。
イージス艦の隊員の任務遂行に対する態度は、ある意味今の日本の風潮を投影しているように思えてなりません。
子供時代に覚えた軍歌「戦友」にこんな歌詞があります。
「軍律厳しき中なれど、 是が見捨てゝ置かりょうか 「確りせよ」と抱き起し 假繃帶も彈丸の中」
軍律は昨今の自衛隊では甘くなっているのでしょうか。
日露戦争当時作られた歌ですが、この歌詞の状況だと戦友が弾あたり、倒れてしまった。しかし敵と戦わなければいけないが戦友を見捨てることが出来ず助けた。しかし、衛生班も攻撃を受けている。
軍律を守らなければと言う覚悟を持っているのでしょうか?。
防衛省幹部の贈収賄事件、自衛隊員の不祥事、機密漏洩、工事発注の不正などメディア報じていますが国を守れるのか不安になります。
しかし、ある一面国民の側にも反省すべき点を感じます。
あるテレビ番組で感じた事ですが。ディスカバリーチャンネルで放送している番組で、内容はアメリカンチョッパーのカスタムバイク製作工場の製作過程をテレビ番組にしているものです。カスタムバイク製作にあたり、テーマを決めそれをモチーフにして造っているのです。そのときは傷痍軍人の援助基金集めのオークションに使おうと、軍をテーマにバイク製作していました。それを聞きつけた各部隊の軍人さんが感謝するために、その工場に訪れ、軍旗、艦旗をプレゼントして感謝の意を表していました。
それを受けて、そこの社長はこういうのです。『自由のために命を捧げて、戦っている軍人に敬意を表したいと』言うのです。アメリカは戦争を起こす時、『自由のために』と必ず使うせりふですが。彼の息子ふたりも同様な思いを持っているようでした。アメリカは今でも戦争をしていますが、自由のためにと戦っている兵隊さんにアメリカ国民は、彼らのように兵隊さんに感謝しているのでしょう。
日本では、どの程度自衛隊員に思いをかけているでしょうか。アメリカのように日本でも多くの人が感謝、敬意をもって接すれば、責務を自覚し士気があがるかなと感じます。
人の心と言う面で『機事、機心』の考え方は、人間―機械システムの関係の本質をついているような気がします。私たちの身の回りでいろいろな機械システムが活躍します。例えば、原子力発電、新幹線、飛行機など機械システムなど、人がどう関わるかで正常な運用が決まってきます。
心の本質を言い当てた先人の言葉があります。
心こそ、心転がす心なれ
    心に心、心して居よ
ころころと、転げ易きは人心
    転がぬように、心して持て   
人として、心を律する大切さを教えています。
最近、品位、品格と言う言葉を耳にしますが、人間の高みはそれによって備わるのでしょう。
享楽主義的(楽しければ、面白ければが優先の安逸さ)昨今、心の隙が生じ易いことを見直し、もう一度先人達が残した言葉に耳を傾ける必要を感じます。
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